シラバス情報

授業コード
54530002
講義名
犯罪者と更生 [ライブ]
開講時期
2021年度3Q(後期)
科目分類
科目分野
教員名
松本 隆
実務家教員
履修年次
2〜4
単位数
1単位
曜日時限
金曜4限

学習目標 (到達目標)
実務家である弁護士が「犯罪者」という点から、「どうなると犯罪者となってしまうか」を規律する「刑法」と「犯罪者になった場合に受ける捜査や裁判等」を規律する「刑事訴訟法」を実際の現場に即して解説する。
また、「更生」という点から、更生のための制度や弁護士等の活動についても詳しく解説する。
したがって、到達目標は、
・日本の刑法・刑事訴訟の基本的な概念を理解すること、
・実際に実務で行われている捜査実務や裁判手続を正確に理解すること、
・更生のための制度や弁護士等の活動を理解すること
である。
「生の事件」をもとに可能な限り具体的に解説していく予定であり、ハートが熱くなるようなものにしたいと考えている。
刑事事件に関わる内容のコンテンツ(例えば、映画、ドラマ、アニメなど)を制作することを志す者にとっては実際に作品を作る上での材料(ヒント)も見つけられればそれはなお望ましいことである。
授業概要 (教育目的)
犯罪とは何か、警察、検察官、弁護士、裁判官がどのような役割を果たすか、社会正義とは一体何か、犯罪者はどういった扱いを受けるのか、裁判の手続の流れはどのようなものとなっているか、更生の手段にはどういうものがあるのか、実際に更生するのかなどといった内容は、作品を制作する者にとっては主要なテーマになり得るものである(もちろん、刑事事件に関する作品を制作しない者にとってもこれらは生きる上で知っておくべき内容である)。
例えば、犯罪をしてしまうとどういう言い訳をしてしまうものなのか、示談だとか被害弁償だとかが具体的にどのように行われるか、警察がどのように犯罪の証拠を掴んでいくのか、実際に犯罪をしてしまった人が更生しているのか、再犯率はどのくらいであるのか、これらは新聞やニュースにはほとんど出て来ない。
本授業は上記のような内容を正確に理解し、刑事事件に関する基礎的な知識を身につけることを目的とする。
また、具体的な事例を通じて、日本における司法の問題点を学んでもらい、作品を制作していく上で、ひいては生きていく上での一助となれるようにしたいと考えている。
履修条件
履修条件緩和
成績評価方法・基準
毎回の出席、授業態度やレポートの内容を加味して判断する。
期末試験の内容
期末試験は行わない。
課題の内容
授業の理解度を問うレポート、興味を持った事件に関するレポート、裁判傍聴のレポート等を念頭に置いている。

授業内容
第1回
刑法①
(犯罪とは、構成要件とは何か、個々の犯罪について件数の多い犯罪や重大犯罪を中心に)
更生①
(窃盗などお金がない人のその後について—2度と盗みをしなくて済むためにはお金が必要、緊急更生保護施設とは、簡易宿泊所はどういうところか)
第2回
刑法②
(構成要件の補足、違法性阻却事由とは何か、正当防衛について、過剰防衛について)
更生② 
(詐欺からの立ち直り—どうして詐欺をやるのか、詐欺師はいい人?、振り込め詐欺のトカゲのしっぽ切りとは)
第3回
刑法③
(違法性阻却事由の補足、責任阻却事由とは何か、刑事責任能力について、精神鑑定について)
更生③
(覚せい剤、大麻、コカインなどの薬物依存治療—薬物にハマってしまうのはなぜ?、どういう治療をするものなの?治療をすれば本当に使わなくなるの?)
第4回
刑事訴訟法①
(捜査実務と裁判例、身体拘束の期間制限について、令状主義について、違法な捜査とはどのようなものか)
更生④
(少年事件のその後−可塑性というものは何か、少年院は刑務所と何が違うのか、少年院で資格が取れるのは本当か)
第5回
刑事訴訟法②
(公判実務と裁判例、裁判の手続の具体的内容、証拠について、刑罰の種類等)
更生⑤
(長い懲役刑をどう過ごすか—1発で実刑になってしまう犯罪について、仮釈放とはどういうシステムか、韓国の再犯防止策の試験的取り入れ)
第6回
刑事訴訟法③
(①②の補足、裁判員裁判について(通常の裁判官裁判との違い、裁判員の選定のしかた、当初の予測と実際の違い等))
更生⑥ 
(死刑と更生—日本において死刑になる可能性の有無はどう決まっているのか、死刑になる人が更生する必要は果たしてあるのか)
第7回
刑事訴訟法④
(更生のための制度総ざらい(生活保護、薬物等の依存症治療、保護観察、更生緊急保護等)犯罪被害者参加制度(具体的な制度内容、犯罪被害者の生の声等)
更生⑦ 
(更生とはつまり何なのか)
第8回
発展問題
(少年事件、虐待問題、虐待冤罪問題について)
更生⑧
(生きる意味と更生)

購入が必要な教科書
書名
なし
著者
出版社
ISBN
備考

教科書以外に準備するもの(画材・機材)
なし

参考文献
入門刑事法(三井 誠/瀬川 晃/北川佳世子・編 有斐閣)2020年4月発行
※大学での教科書販売はありません。

教員より履修学生へメッセージ
私は、弁護士としてこれまで会ってきた「犯罪者」とされる人たちを「自分とは全く別の人種だ」と思ったことは一度もありませんでした。
犯罪と縁がなく生きてこれたことは幸せなことです。
これまで冤罪(無実の罪)で逮捕された人を何人か見てきておりますが、犯罪をしてなくても犯罪に巻き込まれる可能性があります。
この講義では「犯罪とは何か」ということ、「犯罪者」という言葉が持つ意味に思いを馳せて欲しいと思います。
そして、「更生」のための制度はどのようなものがあるのか、自分たちに何ができることがあるのか、を一緒に考えて欲しいです。
教員連絡先
takashi_matsumoto@dhw.ac.jp