シラバス情報

授業コード
52140002
講義名
日本文学
開講時期
2024年度2Q(前期)
科目分類
教養
科目分野
知の源泉/表現
教員名
栗原 飛宇馬
実務家教員
履修年次
2~4
単位数
1.00単位
曜日時限
木曜3限

授業概要
知識として文学作品に触れるのではなく、先人たちが文学・芸術の営みを通じて切実に問うてきたことを資料と講義を通じて学び、様々な表現に触れることで、受講生が自らの創作活動(あるいは研究や企画)を振り返り、自らが求めているものをより明確にし、自分の言葉で表現できるようにする。学んだ内容から積極的に刺激を受け、受講生それぞれが関心をもつ対象への批評・洞察力を高めることで、各自が生涯を通じて取り組みたいテーマを見つけ、掘り下げていく姿勢を身につける。
到達目標
(1)古今の文学者・芸術家らがどのような動機から創作に向かったかを考察することで、自らの創作や研究の動機・姿勢を対象化して考えられるようになる。

(2)日本文学が文学という領域に留まらず、世界の様々な芸術や思想、サブカルチャーと深い関わりを持つことを学び、自身の関心をさらに掘り下げる探求心を養う。

(3)一般的なジャンル区分を超えた創作の実践例を知ることで、既存の枠組みに囚われない発想力を磨く。

履修条件
履修条件緩和
成績評価方法・基準
(1)授業中に出す課題への応答(48%)
(2)期末レポート(52%)
期末試験の内容
期末試験は実施せず、期末レポートを課す。
課題の内容
(1)授業中に出す課題への応答
 各回の講義内容に合わせて、毎回授業中に課題を出すので、googleフォームやFSなど指定された方法で回答すること。

(2)期末レポート
 第1回から第8回の授業で取り上げた詩人・作家のテキストや講義の内容を踏まえ(※)、そこから触発された自身の創作のテーマや構想をレポートとして提出してもらう。創作をしない受講生は企画や研究テーマでも可とする。

※授業で扱った作家や作品だけに限定せず、講義の中で触れた話題やフレーズ、思想など、少しでも関わりがあれば可とする。
※レポートの形式は自由だが、WEBサイトなどの丸写しは不可とする。引用文献、参考文献がある場合は必ず出典を明記すること。
※提出期限は最終授業から1週間後とし、具体的な日時や提出方法は授業およびデジキャンで告知する。

授業内容
第1回
イントロダクション:文学は何を問題にしてきたか?
文学があつかうのはお説教めいた理屈ではなく、誰にとっても身近な「心」の問題であることを確認する。初回の授業ではその端的な例として、三角関係の末、失恋を契機にそれぞれが希有な詩人、批評家へと成熟した中原中也、小林秀雄のテキスト・伝記を読み、「出逢い」が人生や文学に何をもたらすかを受講生それぞれが考察できるようにする。また、本講義の成績評価について説明を行うほか、参考文献の探し方などを紹介し、物事をより深く調べる方法を学ぶ。

【事前学修】シラバスを読んでおくこと。
【事後学修】次回の予習として、指定された配布資料を読み、授業中に出した課題の答えを再考しておくこと。
第2回
特撮映画と古典文学
『ウルトラマン』の監督として、また、特異な映像美の追求者として知られる実相寺昭雄は日本の古典や古代史への造詣が深く、それが作品にも反映されている。実相寺作品を足がかりに、万葉集をはじめとする和歌の世界や、古代の人々のこの世ならぬものへの志向を知り、創作行為の根源を考える契機とする。さらに、古典の「伝統」が自然発生的なものではなく、人為的に作られてきた側面があることを知り、芸術と社会の関わりについて様々な角度から考察する視点を養う。

【事前学修】受講生からの質問にデジキャンで回答するので授業前に目を通しておくこと。
【事後学修】配布資料を再読し、講義を受けて気づいたこと、考えが深まったことをまとめておくこと。
第3回
源氏物語と世界文学
様々なバリエーションの現代語訳や外国語訳など、多彩な〈翻訳〉を持つテクストが「源氏物語」である。ここでは与謝野晶子訳の「源氏物語」を中心に、その魅力がどこにあるかを考える。さらに「源氏物語」の内容には、ラファイエット夫人「クレーヴの奥方」やドストエフスキー「白痴」といった海外の文学作品との類似が見出せることを学び、世界文学としての普遍性について理解を深める。

【事前学修】受講生からの質問にデジキャンで回答するので授業前に目を通しておくこと。
【事後学修】自身の活動や関心のある対象と社会との関わりについて考え、気づいたことをまとめておくこと。
第4回
文学理論は無用の長物か? 夏目漱石・萩原朔太郎の思索をめぐって
創作を志す者にとって、自分の作品行為の意味を問うことは不可避な営みだが、実際にそれを書きとめたものが高く評価されることは少ない。しばしば失敗と評される漱石の『文学論』と朔太郎の『詩の原理』を検討することで、実用性だけでは価値を測れない文学理論の意義について、受講生各自が考えを深められるようにする。

【事前学修】受講生からの質問にデジキャンで回答するので授業前に目を通しておくこと。
【事後学修】これまでの配布資料の中で関心の持ったテーマや言葉を探し、まとめておくこと。
第5回
手品と文学 江戸川乱歩と萩原朔太郎の意外な接点
日本の探偵小説の祖として知られる江戸川乱歩と、日本近代詩の父と呼ばれる萩原朔太郎の間には、手品を共通の趣味とするなど密な交流があった。その内実を検証すると、子供じみた趣味と見なされがちな手品が、彼らの文学の根源的な志向に通じていることが見えてくる。こうした発見を学ぶことで、ジャンルに囚われない多様な視点で文化や芸術に向き合う姿勢を身につける。

【事前学修】受講生からの質問にデジキャンで回答するので授業前に目を通しておくこと。
【事後学修】これまでの講義を振り返り、文学・芸術に対するイメージがどう変わったか、気づいたことをまとめておくこと。
第6回
童話のファンタジーと現実社会
宮澤賢治は、子どもの感性の世界に自在に入り込み、それを童話に結実できる希有な詩人であった。同時にまた、賢治には社会や人間存在への深い洞察があり、それが単なる絵空事でない作品世界の強度をもたらしている。現代の作家であり、魅惑的な幻想世界を描き出す安房直子の童話も同時に検討することで、ファンタジーと現実の関係について考察を深め、各自がファンタジーの根源にあるものを感得できるようにする。

【事前学修】受講生からの質問にデジキャンで回答するので授業前に目を通しておくこと。
【事後学修】配布資料や講義内容で気になったこと、感銘を受けた言葉などをまとめておくこと。
第7回
戦後文学と文学者の戦争責任論
戦時中、ほとんどの詩人・作家が戦意高揚のための作品を書き、戦争に協力したことに対して、戦後、その責任を厳しく問う声があがった。戦争が文学にもたらしたものを概観し、戦争責任の問題に詩人・作家たちがどう向き合ったかを知ることで、過去は現在と断絶したものではなく、今日に続く問題があることを認識し、現代に生きる私たちの課題について各人が問いを持てるようにする。

【事前学修】受講生からの質問にデジキャンで回答するので授業前に目を通しておくこと。
【事後学修】これまでの配布資料や講義内容を振り返り、掘り下げてみたいテーマを探してみること。
第8回
現代の文学は何を描くか? 村上春樹らと近代文学
現代の文学は、近代から戦後にかけての文学の営みから断絶したところにあると言われる。だが、その筆頭のように目される村上春樹に対し、立原道造ら四季派の詩人とのテーマの類似を指摘する研究もある。それら現代文学と近代文学の接点を探ることで、これからの文学的営為が何を追究するのかを考察し、各々の創作動機を深める契機とする。

【事前学修】受講生からの質問にデジキャンで回答するので授業前に目を通しておくこと。
【事後学修】これまでの配布資料やまとめたことを再読し、最終レポートのテーマに反映させること。

購入が必要な教科書

教科書以外に準備するもの(画材・機材)

参考文献
特定のテキストは使用せず、適宜プリント(オンラインの場合はpdf)を配布する。
参考文献は各回の授業にて提示する。
※大学での教科書販売はありません。

教員連絡先
hiuma_kurihara@dhw.ac.jp